2013年7月15日月曜日

2013年度の教育活動の目標

2013年度の教育活動の自己目標を設定しました.


3つのミッション全てが教育活動に関連します.
  • IT・組込みシステムを活用・開発する多能工プログラマを育成すること
  • 確固たる価値観に基づいて未来の社会をデザインし行動する起業家を支援すること,およびそのような起業家マインドを持ったエンジニアを育成すること
  • 教育の研究成果をさまざまな形で社会に還元すること
「IT・組込みシステムを活用・開発する多能工プログラマを育成すること」に向け,
新カリキュラムのソフトウェア工学関連科目を「多能工プログラマの育成」にフォーカスし,内容を見直します.
キーコンセプトは次の2つです.

  • 最も効果が高いプログラミングの教育方法は,「コードレビュー」つまり,学生の書いたプログラムコードの改善点を議論することです.そこで,コードレビューを授業の中心的活動とすることを目指します.
  • コードレビューを中心として,さまざまなソフトウェア工学上の知識の多くを関連づけられるのではないかという仮説を私は持っています.そのような教育は,経験学習の観点からも望ましいです.そこで,ソフトウェア工学上の知識をコードレビューの中に折り込む授業スタイルの確立を目指します.
つまり「コードレビューを中核に据えたソフトウェア知識体系の教授」を目指します.

これを実現する上では,コードレビューは一種の個別指導なので手間がかかる点が最も大きな課題です.実現するために次のアプローチを取ります.
  • 指導者層を厚くする
    • コードレビューを行うのに十分な技量を持ったEAやTAを育成する研修プログラムを開発し,一人でも多くコードレビューの指導が可能な人を増やします.
    • 将来的には,理解の早い学生にもこの研修プログラムを適用し,指導側に回れるように教育します.
  • 一度に教える学生数を減らす
    • 演習系科目のクラスを分け,クラス内でも3~7人程度の少人数グループに分け,少人数で行き届いた教育ができるようにします.
  • 知識伝授のコストを減らす
    • 教授内容をeラーニング教材部品として多数準備して活用することで,知識伝授にかかるコストを減らします.

各科目の目標は次のとおりです.
  • 【計算機演習I】
    2013年度より別の先生に担当をバトンタッチします.そのため,次の3つの目標を掲げます.
    • 2012年度に導入したプログラミングの新教材の運用方法を新担当の先生に引き継ぎます.
    • 今までの授業を総括する場を設けます.計算機演習Iの新旧担当者だけでなく,後続科目の計算機演習IIの新旧担当者も総括の場に招きます.
    • プログラミング演習を早く修了してしまった学生向けに,アドバンストコースを提供することで,プログラミングへの興味関心を喚起します.
  • 【プログラミング言語処理系】【コンピュータシステム】
    学生の習得状況から考察して,「CPUの機械語レベルでのコンピュータの動作原理をよく理解するとプログラミング能力の向上につながる」という仮説を立てました.2012年度の調査で,かなり多くの学生がこのレベルのコンピュータの動作原理を理解していないことがわかりました.そこで,2014年度から実施する新カリキュラム「コンピュータシステム」では,コンピュータの動作原理の完全習得にとくに力を入れます.
    2013年度には現行カリキュラム「プログラミング言語処理系」との共通部分であるコンピュータの動作原理,コード生成・最適化の新教材を開発します.この中でとくにコンピュータの動作原理に重きを置き,習得効果を最大限に高めることを目指します.
    最終的には教科書の出版を目指します.
  • 【ソフトウェア設計論】【ソフトウェア設計・同演習】
    今までの完全習得学習を目指す方向性を継続します.2013年度では,より高い授業効果を目指すため,習得する順序を変更して効果を確かめます.
    また,2015年度からの新カリキュラム移行に向けて,新教材とコードレビューの研修プログラムの準備を進めます.さらにコードレビューを起点にしてオブジェクト指向やUMLにつながるような指導方法の実現について検討します.
    最終的には教科書の出版を目指します.
  • 【オブジェクト指向プログラミング演習】【プログラミング・同演習】
    2015年度からの新カリキュラム移行に向けて,新教材とコードレビューの研修プログラムの準備を進めます.新教材では,共同担当の先生の得意分野である画像処理にフォーカスし,基本的な画像処理アプリケーションの構築方法を習得する教育プログラムの開発を行います.
    最終的には教科書の出版を目指します.
  • 【カーエレクトロニクス技術概論】
    2012年度に開発した,ソフトウェアアーキテクチャに関する反転授業を再度実施し,授業効果を確かめます.
  • 【ソフトウェア工学概論】
    新カリキュラムの施行に伴い,大きく構成を変えます.2012年度に得られた反転授業の経験を生かし,反転授業を取り入れた独自の授業スタイルを開発します.授業テーマは「技術の学び方を学ぶ」「主体的に深く学ぶ」方向性です.授業を2部構成にし,前半で知識の習得を行いながら,調査の過程で生じた疑問点(リサーチクエッション)を提出させます.後半ではリサーチクエッションの中から選んで深く調査し,ポスター発表を行なって,そこでの議論をまとめます.
    前半の講義資料を元に,最終的には教科書の出版を目指します.
  • 【組込みソフトウェア】
    2012年度に打ち立てた授業の方向性を継続し,完成度の向上を目指します.
  • 【卒業研究指導・特別研究指導】
    「学生に主体的に問題を発見・解決させること」を主眼に置く研究指導の方向性を継続します.また,より実践的な学びの場を提供するために,全体目標に掲げたようにコードレビューを強化することと,地元企業を中心とした共同研究プロジェクトを立ち上げてインターンシップ的な学びの場を提供することを行います.

「確固たる価値観に基づいて未来の社会をデザインし行動する起業家を支援すること,およびそのような起業家マインドを持ったエンジニアを育成すること」に向け,次の目標を設定します.

  • ビジネスモデルキャンバスを使って,起業家マインドを学生に学ばせる方法を確立します.
  • 地元企業を中心とした共同研究プロジェクトを活用して,実際のビジネスについて学ぶ場を提供します.

これを受けて,各科目で次のような目標を設定します.

  • 【入門ゼミ】
    ビジネスモデルキャンバスを使って起業家マインドを学ばせるゼミを行います.ビジネスモデルキャンバスは,従来は難解な文章でしか記述できなかったビジネスモデルを9つの要素で可視化する手法です.ゼミの実施にあたり,1年生だけでなく上級生や社会人ともチームを組んでもらうことで刺激を与え深い議論になるように場を設定します.これに伴い2013年度から学科全員の指導をいったん中止し,小人数グループの指導に戻します.
  • 【グループ担任】
    学業が振るわない,あるいは生活態度が悪い学生のほとんどは,自己目標を持っていないと考えられます.そこで,自己目標を持たせるために,入門ゼミでも取り入れたビジネスモデルキャンバスを使った自己啓発の手法を実施します.
  • 【卒業研究指導・特別研究指導】
    前述のように地元企業を中心とした共同研究プロジェクトを立ち上げて学生に参画させ,実際のビジネスについて学ぶ場を提供します.理論面としては,前述のビジネスモデルキャンバスに加え,現代的な起業に有効な方法論であるリーン・スタートアップの考え方を取り入れます.
  • 【フューチャーセンター】
    学生の起業家マインドを奮い立たせるため,定常的に未来のあるべき姿について議論できる場として,フューチャーセンターを設立します.

「教育の研究成果をさまざまな形で社会に還元すること」に向け,
上記の各項目について,教科書の出版の準備,論文発表,ソーシャルメディアを通じた普及活動を行います.