2010年10月29日金曜日

これからの思考の教科書 ~論理、直感、統合ー現場に必要な3つの考え方~

ついに,求めていた本が見つかりました.

これからの思考の教科書 ~論理、直感、統合ー現場に必要な3つの考え方~

この本の主張は,縦の思考(ロジカルシンキング: logical thinking)だけでなく,横の思考(ラテラルシンキング: lateral thinking)も必要だということ,最終的には統合思考(インテグレーティブシンキング: integrative thinking)を目指す必要がある,ということです.縦の思考と横の思考の関係は,ちょうど縦の思考がツッコミで,横の思考がボケに相当します.

今は誰もがロジカルシンキングを重要だとしていますが,現代のようなインターネット社会/グローバル社会で情報が均質化していく状況では,ロジカルシンキングだけでは誰がやっても同じ解しか得られません.

その限界を超えるために必要なのがラテラルシンキングです.創造的な仕事はあまり定石がないと思われがちですが,実は世の中に発想法の類いは何百種類とあるそうです.そういうツールを生かしつつ,たとえば今まで誰もが試さなかった組合わせを試すというようなことで,ロジカルシンキングの限界を超えるわけです.

この本に難点をつけるなら,具体的な手法が数種類しかあげられておらず,しかも基本的な使い方に終始していて,深く突っ込んだ活用方法があまり見られなかった点です.(早とちりでした.たしかにラテラルシンキングやインテグレーティブシンキングについては数種類しか紹介されていませんが,ロジカルシンキングについてはたくさん,しかもきちんと整理されて紹介されています.) しかし,パズルのピースを探していた私にとっては,先に紹介したフレームワークだけでも十分価値があります.

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最近,私の強みをずっと考えていたのですが,分野と分野をまたぐ,文系と理系の枠を越える,産業界と学術界をつなぐ,そういったところに強みがあるように思います.仮にそうだとすると,これからすべきことの1つはラテラルシンキングのツールを収集し,得失を分析して,活用方法を編み出し,さまざまな局面で実践することだと思います.

そういった明確な方向性を与えてくれたという意味で,私にとって大きな価値のある本でした.



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2010年10月23日土曜日

ロジカル・プレゼンテーション 〜 自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術」

今回紹介する本は,ロジカル・プレゼンテーションです.

プレゼンテーションと言っても,PowerPoint の作り方といった内容ではありません.「提案」そのものを,論理思考力,仮説検証力,会議設計力,資料作成力の4つの観点から,どのように緻密に構成していくかという話です.

論理思考力とは,A ならば B であるという論理があったときに,その論理を相手に心から納得させるための技術です.たとえば,論理に抜け落ちている観点や飛躍があったりすると相手は納得できません.この本では,縦と横の論理という整理法で論理を形成する技術を紹介しています.

仮説検証力とは,まず相手の疑問を知り,次にその疑問に対して答えるための技術です.この本では,この一見当たり前に見えることが,実際にはいかにできていないかを指摘しています.それを目的,論点,仮説,検証,示唆の5段階で進めることだ大事だと力説しています.

会議設計力とは,退屈になりがちな会議を,本当に実りある時間に変えるための技術です.この本では,会議しているという認識,会議の論点,提案全体の中での今回の提案の位置づけ,相手に合わせた論理という4つの観点から,会議の「着地点」と「着地スタイル」の設計をする方法を示しています.

資料作成力とは,提案内容を示す資料を効果的に作成するための技術です.メッセージ,チャート,スライド,パッケージ,マテリアルの5つにモジュール化された資料を作るべきだと述べています.

この本自体が上記の4つの観点で整理されたプレゼンテーションの模範例としてよくできています.企業向けのプレゼンテーションをする人全員が読むべき本だと思います.一方,はじめてプレゼンテーションを作る学生には抽象的で高度すぎる内容かもしれません.PowerPoint  をどう使ってどういう資料を作ってという本の方が有益でしょう.むしろ学生のプレゼンテーションをレビューする立場の教員の方が有用かもしれません.





2010年10月22日金曜日

OOP演習の進捗 (2)

授業が始まって3週目が終わりました.
今週はスケジュール的に厳しく,連載作家のように「落ちる!落ちる!」という恐怖に駆られていました.でも,たぶん来週は少しはプレッシャーが弱まると思います.

2010年10月12日火曜日

UML モデリングおすすめ書籍

UML モデリングの本で,かなりおすすめの書籍を2冊紹介します.


UMLによるオブジェクト指向モデリングセルフレビューノート


UML の主要な図について,レビューするときに見るべきポイントを丁寧に解説しています.復刊しないかなぁ.




「モデリング能力にはトレーニングが必要だ」との持論に基づいて,「アイスクリームをモデリングせよ」というような,頭が柔らかくないとできないようなお題が多数掲載されています.もちろん丁寧な解説付きです.

2010年10月8日金曜日

ペルソナ関連

奇しくも研究室の中と外でほぼ同時にペルソナ法が話題になったので,ブログに書こうと思い立ちました.

ペルソナ関連の基本文献を紹介します.

元祖 Alan Cooper の本




本の半ばくらいまでは,既存のコンピューターに対する愚痴です.それはそれで興味深い洞察で面白いのですが,手っ取り早く読みたい人は1,2章愚痴につきあったら,ペルソナ法の紹介の章へ飛んでも十分読めると思います.

The Persona Lifecycle


ペルソナ法の詳細を知りたいならこの本です.洋書は必ず買うべきです.というのは,和書は方法の紹介だけしか載っておらず,カラフルな写真やイラストを多用した事例紹介や,実際にすすめる上での重要なヒントなど,肝心な情報は洋書にしか載っていないからです.


2010年10月7日木曜日

はじめてのファシリテーション

ファシリテーション(facilitation)は,元々の意味は促進するという意味です.
新たな発想を生み出す源になる,議論を活性化するための技術として注目を集めています.

いくつかの本を読んだので,その中からおすすめの本を紹介したいと思います.


小説仕立ての本です.ファシリテーションがどのようなものかよく知らない人が,ファシリテーションがどのような感じで行われるのかの雰囲気をつかむのに最適です.そして,他の書籍を一通り読んだ後,もう一度この本を読むと,ケーススタディとして分析することができます.続編もあります.


ホワイトボードに絵を書きながら議論を見える化するのは,ファシリテーションの1つの大きな技術領域です.この本は,議論を「絵」の形でまとめる方法を,たくさんの事例とともに紹介しています.


一方,この本は議論で登場した「概念」を整理する技術領域がまとめられています.タイトルの通り,話題の「問題解決力」にも効く本です.

以上,これら3冊を読めば,後は実地で試しつつ,課題を認識して新たな本を読み,また実地で試して,というサイクルができると思います.

2010年10月3日日曜日

普段の業務の「システム」を考えよう 〜 はじめの一歩を踏み出そう

今日紹介する本は「はじめの一歩を踏み出そう〜成功する人たちの起業術」です.

起業しようという人がたいてい陥る(そして僕も見事に引っかかった)典型的なをはじめに紹介し,企業目標・事業目標を立てて,それを実現する「システム」を構築せよ,というのがこの本の教えです.

システムの中には,マニュアルとか,(本の中ではそう書いてはいませんが)標準プロセスとかが含まれています.マニュアルとか標準プロセスというと,画一的で人間らしさを否定するようなものとして受け止められることが多いのですが,あるホテルの例を引き合いに出し,人間らしさを実現するマニュアルや標準プロセスがあり得ると述べています.

目標を考えること,システムを考えることは,起業する前から練ることができます.たとえば普段やっている業務の目標・目的を考えたり,マニュアルやプロセスを書いてみればいいのです.それができないと,起業しても成長できないとこの本は説きます.

僕も既に研究室の運営を行っています.この本のような視点から研究室の「システム」を構築していこうと思います.

学生さんも,起業は自分に縁のない遠い話だとは思わずに,この本を読んでみてください.将来,改善活動に携わることになったときには,この本の知識が役に立つはずです.そこまで先の未来でなくても,自分が取り組んでいる身近なことについて目標やシステムを考察すると,「できる人」に一歩近づくことでしょう.


2010年10月1日金曜日

OOP演習の進捗(1)

ついにαテスト開始.まだまだ序の口.
あっという間に追いつかれたらどうしよう.
でも,どんなに自転車操業が苦しくても,品質を妥協するのはやめよう.

「自分にとっての資産とは何か」を考えよう 〜 金持ち父さん貧乏父さん

ずいぶん久しぶりになってしまいました.

復帰第1弾は,今さらですがベストセラーの「金持ち父さん貧乏父さん」です.



この本,Amazon のレビューでは賛否両論ですね.
否定的な意見になる気持ちも理解はできますが,僕はこの本の真髄を理解していないゆえに湧き出た疑念なのだと考えます.

金持ち父さん(そして著者)の主張は「資産をふやせ」に尽きると思います.資産の定義は,金持ち父さん流では「収入を生むもの」すべてです.
そして,どんな職業の人にとっても普遍的な資産は,不労所得,つまり株や不動産などなので,金持ち父さんはその運用の基礎を教えます.しかし,僕は,不労所得は資産の一部にすぎないと考えます.

僕にとっての最大の資産は何でしょうか.もちろん,株や不動産も資産ですが,僕はこれらの知識やリテラシーに乏しいので,収入を生むようになるためにはかなりの金銭の投資だけではなく,関連書籍やセミナーなどの,情報を得るための投資が必要でしょう.

金持ち父さんは教えます.「自分の頭を使って稼げ」と.つまり,今まで持っている知識も活用方法によっては資産になりうるというのです.だから僕にとっての最大の資産は,ソフトウェア工学と周辺に関する,小学校高学年以来の20年以上の知識と経験なのです.あとは,お金を生むための効果的・効率的な運用(あるいはシステム)を考えればいいのです.


僕が,忙しいけど頑張ってブログを再開しようと思ったきっかけは,金持ち父さん貧乏父さんです.なぜならば,このブログも僕にとっての資産だからです.Twitter も資産ですが,流動資産(フロー)の要素が強いのですよね.ブログは固定資産(ストック)になり得ます.だから,どんなにつらくても資産としてのブログを書きためようと思ったのです.

決意表明をかねて,ブログ再開の最初の記事としたいと思います.