2010年12月23日木曜日

インサイドアウトと相乗効果,これからの就職活動や市民活動のあり方〜7つの習慣

今回は7つの習慣―成功には原則があった!の重要な考え方の1つである,インサイドアウトについて考えます.

インサイドアウトは「内から外へ」という意味で,自分の内面にあるものに作用して,外へ波及させるという考え方です.

自分のことを棚に上げて,学校が悪い,会社が悪い,社会が悪い,という人がいます.このような人は,自分の抱えている問題は自分の手に及ばないことのせいにしているので,このままでは決して変わらないです.

それに対しインサイドアウトの考え方は,自分が影響を及ぼして変えられる範囲のことに集中します.具体的には,まず自分自身を変えていくことから始めるのです.この考え方が根底にあるので,7つの習慣の順番は,自分の内面を変えることから始まり,徐々に自分の周りの人に作用することへと続くのです.最初は大して世の中を変えることはできないかもしれませんが,だんだん自分の影響範囲が広がっていき,最終的には大きく世の中を変えていく力にしていくのです.

インサイドアウトを,以前紹介した Win-Win の話と合わせて考えてみます.もしインサイドアウトを考慮せずに Win-Win を目指した場合にはどうなるでしょうか.互いに自分よりも他人に変化を要求しあうことにより,多くの場合 Win-Win に到達することは困難でしょう.交渉の末,なんとか Win-Win を達成したとしても妥協のレベルでしか達成し得ないと考えられます.

相乗効果を狙うとしたら,それぞれの立場を超えてお互いを理解し合うことが必要です.それにはインサイドアウトを実践することが近道です.相手を無理矢理変えさせるより先にまず自分を変えること,具体的にどう変えるのかと言えば,自分の要求ばかり口にするのではなく,まず相手の声に耳を傾け,相手の立場を理解することです.お互いの立場を理解しないことには相乗効果など期待できません.

このようなインサイドアウトの考えに疑問を持った人がいるかもしれません.「そうは言っても,真の原因が社会にあることも考えられるではないか」その例として,私は就職活動のことを連想しました.この未曾有の不況下で就職事情は限りなく悪化しています.その根本的な原因の多くは社会の構造的欠陥にあることが多くの人から指摘されています.このような事例においても,インサイドアウトの考えが正しい,つまり社会を批判するのではなく,まず自分を変えるべきでしょうか.インサイドアウトはそういう,ある意味自虐的な考え方なのでしょうか.

私は,そのような解釈はインサイドアウトの本質を理解していないと考えます.インサイドアウトの教えは,自分が影響を及ぼして変えられる範囲のことに集中することです.したがって,狭義の就職活動だけではなく,微力でも社会に影響を及ぼして変えていくことも含めて自ら率先して活動することがインサイドアウトに基づく就職活動だと思います.

断っておきますが,私がここで言う「社会を変える」活動は,必ずしもいわゆるデモ運動に代表されるような旧来の活動のことを意味しません.なぜならば,旧来のデモ活動は単に一方的な要求を叫ぶのみで相手との建設的な対話を含んでいないため,多くの場合 Win-Win は達成できず,頑張ってせいぜい妥協しか達成できないからです.

もし私が就職活動デモを含む市民活動を企画するとしたら,労使など立場の違う人々を交えたワークショップのような建設的な市民活動を考えるでしょう.この方がはるかに相乗効果を達成できる可能性があります.市民活動は時代時代によって最適なアプローチが異なるはずです.現代の日本の事情にあった市民活動のあり方があると,私は思います.

もちろん,学生さんの立場ではこのような企画をすることは難しいかもしれません.でも,学生には学生なりの社会との関わり方,相乗効果を達成する方法があると私は信じています.就職活動で疲弊している学生さんには,ただただつらいかもしれませんが,目の前の就職活動だけではなく,就職に対する考え方をはじめとする自分の人生のあり方とか,社会との関わりとか,そういう「緊急ではないけれど重要なこと(これは第3の習慣の教えです)」に目を向けることも大切ではないかと思います.

2013/1/13 追記:
変えられるのにあえて変えないタイプの人もいます。そういう人には私が何を言っても変えないかもしれませんね。でも私は,私が変えられる範囲の人を私が善いと信じる方向に導く活動をするだけです。